|

第1話 * 最後のバースデー
99年の年が明けた。年末以降、天候が悪く寒い日々になった。診療再開を待って、トミーをふたり掛りで動物病院へ連れて行った。その前に診てもらったのはいつだったのか覚えていないが、その間に床ずれはひどく悪化してしまった。診察を受けている間、診察台の上に横たえたトミーを私は涙なしで見ることができなかった。それはそれは見るも耐え難いほどの悪化だった。そこに大きな穴がすっぽり開いたように、その奥の骨にまで達していた。
それから数日たって、1月9日はトミーの14才の誕生日だった。実家で下の娘も来て、夜、お祝いをした。トミーを四角いたらい(セメントを混ぜる時に使う舟様の物)に乗せて室内へ運んだ。
いつも誕生日だけは特別にステーキ肉のごちそうだったが、その日は小さなバースデーケーキも買って来た。ろうそくに火を灯してお祝いをした。普段は食べさせないケーキのスポンジもクリームも食べさせてやった。もちろん大好きな肉も食べて、少しだけボール遊びをした。
トミーの視力はかなり無くなっていたようだったが、目の前で人間同士で黄色いテニスボールを投げ合うのに首を動かして反応した。いつもボールには目が無かった彼が、ひととき目の色を変えてボールの動きを追った。元気な時と同じように。しかし、弱っている身体に無理させないようにと思って、ほんの数分だけだった。ボール遊びをしたことを獣医さんに話したら、「心臓も弱っている状態なのに駄目ですよ。」と叱られてしまったけど。
彼がほとんど目が見えなくなったのは亡くなる数日前からで、それまで尾っぽを持って前足で歩かせてオシッコに連れ出していたのが、見るからに怯えてしまってできなくなった。ふたりがかりで抱えるようにして庭に連れ出した。そうこうしているうちに血尿を出した。
誕生日のあくる日からは食べ物ー肉でさえ受け付けなくなって、獣医さんの指示でスープを作って与えたのもほんの1〜2日。もう身動きもせずに玄関の土間で横たわっているだけだった。13日に先生に往診していただき、14日の午前にも点滴に来ていただいたのに、その甲斐もなくその夜、1月14日、私たちは彼とのお別れの瞬間を迎えることになった。
|